活動報告

平成28年熊本地震被災者医療支援 HuMA熊本地震被災者医療支援に対する評価事業のご報告

活動日:2016年7月13日-7月14日
活動場所:阿蘇市

4月14日の前震からちょうど3か月目の7月13日から7月14日にかけて、夏川知輝医師(HuMA熊本医療支援担当理事)、宮越幸代看護師(1次隊)、伊藤裕介医師(2次隊)、戸田はるか看護師(3次隊)、高田彰(部外アドバイザー)の計5名が阿蘇市に伺い、HuMA熊本地震被災者医療支援に対する評価を行った。

————————-
①評価方法
HuMAが目標とした「医療支援チームのコーディネーション」「避難所に対する巡回診療」「避難所の運営・集約」「全戸訪問」「地元保健師の負担軽減」「被災した妊婦のリスク評価」の項目について、妥当性/適切性(Relevance/Appropriateness)、連結性(Connectedness)、一貫性(Coherence)、被覆率(Coverage)、効率性(Efficiency)、有効性(Effectiveness)、インパクト(Impact)、持続性(Sustainability)という観点で質的指標(Negative fact・Positive fact)、量的指標(Quantitative indicator)を調査した。

②訪問先
・阿蘇市保健センター(HuMA熊本地震被災者医療支援のカウンターパート) 保健師
・小野主生診療所、問端内科(阿蘇市の診療所) 小野崇医師、問端正満医師
・阿蘇医療センター(阿蘇市の拠点病院) 甲斐豊院長、増田美奈子看護部長
・熊本第二体育館避難所(現在も残る2次避難所) 避難者
・阿蘇市体育館、阿蘇西体育館(7/13の大雨の自主避難所) 避難者
・阿蘇プラザホテル(みなし仮設住宅) 的石地区区長山本直樹氏

③結果
質的指標について多くの良かった点といくつかの改善を要する点について挙げていただいた。印象的であった質的指標といくつかの量的指標をここに紹介する。

●医療チームのコーディネーション
過去の災害の経験が適用できないほど規模が大きく、外部支援団体も多かったため保健師が手をつけられないコーディネーションに入ってくれて助かった。チームや個人の個性は強かったが、ものおじせず、保健師のサポートを第一に考えているという一貫性があり、活動が偏ることがなかった。HuMA自体を知らないままにスタートしたが、これまでの災害においてHuMAがどんな活動を行ったのか、HuMAにどんなことが出来るのかを、一般の人にはHuMAの知名度が低いこともあるので、具体的に明示してもらえたらありがたかった。

●避難所に対する巡回診療
開始から撤退まで、一貫して診療ニーズの変動や衛生管理に目を配り、必要に応じた臨機応変な診療体制をとってくれていた。災害関連死は初期の2件のみでHuMAが入ってから関連死は報告されていない。被災後、診療所の医師が3回程度避難所に様子を見に行ったが、被災者の医療ニーズは満たされていたため、診療所での診療に従事できた。避難所から阿蘇医療センターへの救急搬送はほとんどなかった。避難所から診療所への緊急の受診はなかった。

●避難所の運営・集約
2次避難所である阿蘇第二体育館に隔離室を設置した結果、HuMAの支援終了後にノロウィルス下痢症の患者の隔離に有用であった。避難所集約の際、二次避難所の一人分の居住空間の基準を示してくれて、二次避難所の企画を一緒に根拠を持って自信持って作り上げることが出来た。関連死対策の予防に力点をおくことができた。高齢化が高い(34%)ので、避難所に毎日救急車が行くような事態もある程度は予想していたが、それを避けることができた。避難所の集約の時期(1ヶ月半頃)に合わせて、精神的な落ち込みで阿蘇医療センターを受診する患者が増加した。

●全戸訪問
支援チーム撤収後も個別相談票を活用し、地元保健師により引き続き介入された。症例に応じて入院などの適切な介入につながった。区長などから調査に対する苦情はなかった。外部からの支援チームの訪問数/阿蘇市内の世帯数は99.3% (2399/2416)。介入が必要な人の数/接触できた数は65/1476=4.4%

●保健師の負担軽減
産休で欠員のところ、子育て中の保健師に休みをとってもらえた。連休明けから罹災証明の発行業務が入ったが、全ての保健師が連休に1日くらいずつ休めた。発災1か月後くらいから、週に1日程休めるようになった。その場の要請に流れてしまいがちな保健師の業務を客観的に見て、全体的な調整をしてくれたので、災害後1か月以内である5月7日に乳児健診、栄養教室を再開し、震災に関わりなく見ていくべき子どもの成長をみることができた。また健診の再開は、それをきっかけにお母さん同士が安否を確認したり、情報交換したりするよい機会となった。フォーマットづくりや元データの管理をやっている余裕はなく、時間がかかることを早くやってもらえた。意図するものを即つくってもらった。

●被災した妊婦のリスク評価
阿蘇市の全妊婦にアプローチでき、ALSO医師と妊婦さんが直接電話で話せたのはよかった。ハイリスク7人と準ハイリスク19人の妊婦さんに対して保健師からフォローアップがなされた。妊婦さんたちは保健センターから電話があるのは想定外であったようだが、「心配してくれたんですね」とお礼を言われた。妊婦死亡例はなかった。双子の2組は、低体重児出産にもならず、NICUを使わずに出産。車中泊していた外国人の妊婦さんは、ALSOの勧めでホテル泊となり、出産までホテルで無事に過ごした。産後も順調に経過。