第三次本隊 報告書
2013年12月12日・フィリピンレイテ島Merida町近郊のMasumbang村
【本日の活動概要】
本日より、三次隊の活動がスタートしました。早朝に三次隊医師、看護師、調整員各1名がセブよりOrmoc港に着き、フェリー乗り場にてすでに現地で活動していたHuMA医師1名と無事合流。ホテルに荷物を置き、そのまますぐ本日の活動場所に移動しました。
いつものようにMerida町のRural Health Unit(RHU)を訪問しMunicipal Health Officer Solana医師に挨拶して、ここ数日HuMAチームと協働してくれているフィンランドからのボランティアHuhtamaki医師とRHU助産師3名をピックアップし、Merida 地区Masumbang村に向かいました。海沿いの道は台風の被害が甚大ですが、通常は非常に美しい風光明媚な所と思われました。途中で山道に入りました。午前中は天気がよくて日差しが非常に強いです。気温は午前11時半の時点で31.2℃、湿度は63%でした。しかし標高が240m程度あるので、風があればさわやかな感じがします 。
診療室は3診体制と薬局を設置するには少し狭かったですが、風通の良い建物でした。村は主体の産業は農業で、ヤシ、サトウキビ、米、サツマイモ、ジャガイモ、唐辛子などを栽培しているます。鶏と豚を飼育している世帯が多いようです。村には公共交通機関はなく、バイクに2-3人が乗って町まで出ます。滑りやすい石がごろごろした道を、しかも雨季にはどれだけ危険かと思われます。予防注射などでRHUの職員が毎月ここまでバイクに乗って通うというのも、十分に気をつけて欲しいです。子どもがたくさんいるように見えたので、一世帯にどのくらいの子どもがいるかたずねると、3-4人ということで、一番子どもが多い世帯で11人でした。村民はみんなキリスト教徒ということでした。
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暑さの割には風のおかげでさわやかだった | Masumbang村の人々 |
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63人を診察しました | 薬局も担当するHuMA看護師 |
昼休みはRHUの職員が予防注射を行っていました。午後は雲が出て、それ程気温が上がらず助かりました。今日はOrmoc市でクラスターミーティングがあるので、14時には診療を切り上げましたが、隣の家の高齢女性に左足大腿骨骨折の疑いがあったのでRHUまで一緒に連れて行くことになりました。帰り道軽いスコールがありましたが順調にRHUに戻り、骨折した患者をOrmocの病院に紹介しました。
クラスターミーティングでは、HuMA医師が、デング熱の発生が見られる地域があるということでどのような確定診断がなされているのか教えてほしいと質問して、明日その資料をいただくことになりました。 またOrmoc市における報告がありましたが、急性血性下痢が5例、デングが16例、腸チフス・パラチフスが6例でした。コレラ疑いの症例は検査の結果、ロタ腸炎でした。Ormoc市では医療ニーズはかなり落ち着いてきましたが、今後はWASH(Water Sanitation Hygiene Program)や心理面のサポートなどのニーズが残っています。他に小児の栄養評価では、moderate3名、severe9名と報告がありました。
帰りに薬局に寄り、調達を行い、18時半過ぎにはホテルに戻りました。
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クラスターミーティングの様子 | 夕食をとりながら報告書の作成を行う |
【診療報告】
Masumbang村で11時ごろより診療を開始した。 受診者は合計63人で男性は21人(33.3%)、女性42人(66.7%)と他の村と同じく女性の方が多くみられた。 年齢は小児(0-15歳)が24人(38.1%)、生産年齢(16-59歳)は24人(38.1%)、高齢者(60歳以上)は15人(23.8%)であった。他の多くの村と同じく小児の受診が多かった。
疾病、傷病としては急性呼吸器感染症(ARI)が29例(46.0%)に認められた。抗生物質の投与を必要とするARIは4例認めたが、咳や風邪が大半であった。中耳炎等の小児に特異的な疾患も認めた。また、白内障や10年前の交通事故による難聴など、今回の災害とは関係ない疾患で相談に来る患者も認めた。 本日も5例に対して後送病院紹介を行った。中には頻脈を呈している上部消化管出血と考えられる患者もありRHUで申し送りを行った。
午後の診療開始前に、老女がしばらく前より動けなくなっているので診てほしいとの申し出があり、HuMA医師が自宅まで往診した。 老女は台風前の10月30日に崖から滑り落ちて左大腿を受傷していたが、その後台風が発生したため医師の診療を受けておらず、マッサージのような昔ながらの治療を受けていたが、痛みのため立位不能な状態が続いており、左大腿は著しく腫脹したままとなっていた。
診察の結果、大腿骨骨折の可能性があると判断し、レントゲンによる精査を進めたが、レントゲンが撮影できる病院までの搬送手段が大きな問題であった。悪路を越えての山間部であり、通常の移動手段は徒歩かハバルハバルのみとのことであった。「現地の医療を尊重する」という基本方針に沿って現地看護師に状況を説明するも、受診は難しいかもしれないとの判断であった。しかし、患者の娘からなんとか我々の車で搬送してもらえないかとお願いされた。活動スタッフで協議の結果、帰りの搬送手段を患者側で確保することを確認し、RHUまで搬送することとした。家から椅子を担架代わりとして、住民と協力して老女を運びだし、我々の帰りに合わせて車でRHUまで搬送を行った。RHUでも迅速に対応していただき、Ormoc District Hospitalへ搬送していただく方針となった。
患者と患者家族からは非常に感謝され、後でわかったことだが、患者はMasumbang村の元村長とのことであった。 レントゲン一つを取るのにもかなりの苦労がある現地の状況を再認識するとともに、台風災害が間接的に被災者の医療ニーズを増加させている一つの例と感じた。
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