お知らせ

2013フィリピン台風ハイエン被災者医療支援 2013年12月10日

第二次本隊 報告書

2013年12月10日・フィリピンレイテ島Merida町近郊のSan Jose村

【本日の活動概要】
本日も医師2人体制です。日本では普段はなかなか出来ない健康的な早寝早起きの生活で、2人共非常に元気です。

朝、Merida Rural Health Unit(RHU)についてみるとMunicipal Health Officer Solana医師に先客がありました。Huhtamakiというヨーロッパ・中東・南米などで医療支援をしているフィンランド人医師で、フィリピン国内NGOの紹介でこのMerida町に入っており、11月27日から12月12日まで滞在予定、既にRHU看護師とともに4箇所で診療活動しているということでした。自己紹介に続いて、お互いに情報を交換し、そこへSolana医師も加わり3組織による即席Healthミーティングin Meridaとなりました。本日の活動地San Jose村へは毎月1回、RHU public healthの看護師や助産師など4-5人で予防接種拡大計画や妊婦に対して相談などアウトリーチを行っており、最後に訪れたのは10月8日で11月は台風により行けず、今回が発災後初めての医療サービスであり村での医療活動は2か月ぶりとなります。Solana医師のすすめで、Huhtamaki医師も本日はSan Jose村へ一緒に向かうことになりました。

村へは昨日までの情報では4WDで行けることになっていましたが、到達は難しく急な山道を少し歩くことになるだろうとSolana医師から聞いてはおりました。田んぼのなかの未舗装路をしばらく進むと、やはりそこからはもう4WDではアクセスできず、車を降りて徒歩か二輪車で行くしか方法が有りませんでした。安全上の懸念から自分たちは歩いて、薬剤などの重い荷物はハバルハバル(二輪車)で運ぶ計画でしたが、ハバルハバルが現地でなかなかチャーターできなかったため、諦めて荷物を担いで徒歩で行くことになりました。通訳1人、運転手2人、HuMA医師2名で荷物を分担して運びます。HuMA医師も汗だくになって頑張りました。道の途中で路肩の一部崩壊していたり、深さ20cmほどの川があったり、木々が倒れて狭くなっていたりするところもありました。

そんな山道をトレッキングして本日の診療サイトに到着しました。San Joseは人口527人(男性267人・女性260人)、5歳未満39人、被災世帯126、損傷家屋126(全壊53:42%) の村です。以前より日本の学生団体FIWCが活動しており日本に対してかなり好印象を持っている地域で、日本語で挨拶してくる住民もいました。まずは診療所の立ち上げですが、医師2名でのセットアップにも慣れました。なによりも地元の方々がいろいろ手伝ってくれるのでとても助かります。村の視察と自分がみた患者のフォローアップに来たはずのHuhtamaki医師も、HuMAの診療を手伝ってくれることになりました。

フィンランドのHuhtamaki医師も本日は一緒サイトまで遠い道のり
到着まで体力が持つだろうか・・川も越える
子どもたちが笑顔で出迎えてくれた、ありがとう!早速、診療開始です

受付・薬局は手慣れたRHU看護師にお任せし、写真・ビデオ撮影も運転手にお任せ、医師3診体制で診療が始まりました。HuMAスタッフが医師2人しかいないのに、3診体制で診療できてしまう。こんなことが可能になるのは、地元や他機関との調整・協働を大切にするHuMAならではの活動かもしれません。

昼休みには地元の方が名所を紹介したいと、診療場所から徒歩3分ぐらいの場所にある洞窟から川が流れ出し滝になっている場所(Meridaの水源)を教えてくれました。山深いところだけに、自然は豊かで空気も綺麗でした。

2か月ぶりの医療サービスでしたが、もともと大きな村ではなく、台風被害も比較的小さな地域であったため、受診者数も多くありませんでした。よって患者一人一人にしっかり時間をかけて説明を出来たことは収穫でした。本日飛び入り参加のHuhtamaki医師も地元の文化・医療を尊重し、時間をかけてとても丁寧に診察・説明される方で、一緒に働けてとても良い刺激を受けました。お互いに好印象で明日もぜひ一緒に働きたいということになりました。

診療の途中に外では通り雨が降りましたが、まもなく止み、帰る頃には再び晴れ間がのぞいていました。行きよりも少しぬかるんだ道を再び歩いて帰ります。車を止めてある場所まで皆で1時間のトレッキング。軽い疲れはありますが、求められる地域に医療サービスを届けることが出来たとの思いで、疲れを吹き飛ばすだけの充実感があります。

診療後はMerida RHUにて再びSolana医師らとミーティングを行い、それからMerida町やOrmoc市にて、薬局の状況調査や価格調査を行いました。疲労度の高い一日でしたが、二人共ホテルに帰る頃には元気になっており、本日の活動を振り返り明日に備えています。 明日も良い一日になりそうです。無理はしませんが、地元の方々のために精一杯頑張ります。

【診療報告】
本日もHuMAメンバーは医師2名のみであったが、RHUでSolana医師から紹介されたフィンランド人のHuhtamaki医師が診療を手伝ってくれることとなり、3診となった。

San Jose村での受診者は48人で、男性は16人(33.3%)、女性32人(66.7%)と他の村と同じく女性の方が多くみられた。受診者の人数が少ないのは村の人口が527人と小規模であったためと考えられる。 年齢は小児(0-15歳)が23人(47.9%)、生産年齢(16-59歳)は19人(39.6%)、高齢者(60歳以上)は6人(12.5%)であった。他の村と比べると、高齢者の受診は少なかった。

疾病、傷病としては急性呼吸器感染症(ARI)が14例(29.2%)に認められた。抗生物質の投与を必要とするARIは認めず、軽症のみであった。Dr. Huhtamaki医師は軽症のARIに対して丁寧に食事をしっかりとってうがいをするようにと説明し、総合感冒薬の処方なしに経過観察としていることが多かった。皮膚疾患が多く、ほとんどが創傷であった。3例で処置を必要とした。本日、処置用カバンの中からデュオアクティブ(片面が粘着面となっている透明なフィルムで、水蒸気や酸素が透過でき中が蒸れないようになっている。一見バンドエイドのようなもの)を見つけたため、日本で行っているのと同じく洗浄、消毒、被覆した。子供の創傷であるため、剥がれるまでの3日で被覆が不要になると考えられ、デュオアクティブは有用であると考えられる。

診療後、Merida RHUにて今後のHuMA活動地のアクセス情報を入手。あわせて地域の疾病構造と台風による変化、RHUの診療で不足している医薬品などについて、Solana医師とRHU看護師に確認を行った。

・外科処置後の資器材の滅菌について
→RHUにオートクレープが2台あり、処置後の道具はオートクレープで滅菌している。
→もし、HuMAが外科処置を自身の資器材で行った場合は現地の標準に従って滅菌する必要があるため、RHUに滅菌を依頼する必要があると考えられる。

・慢性疾患の診療費について
→RHUでの医療費は無料。しかし、アクセスの悪い村ではRHUに車での交通費(往復で約70フィリピンペソ=約162円程度)が払えず、受診しない患者さんもいる。月に一度は看護師が巡回するが、看護師は総合感冒薬、ビタミンなどの処方のみで、高血圧、糖尿病については継続処方であっても処方不可能であるため、経済的な理由で無治療の患者が発生する。
→HuMAとして慢性疾患への介入について、RHUを受診できる人には処方を開始してもよいが、HuMAの医療支援終了後に治療が継続されない人には処方をすることが適当でない可能性がある。

・台風前後の疾病構造の変化について
→写真で月ごとの症例数についてこれまでと比較したものを撮影した。結果はARI、下痢、創傷が増加していた。傷については台風前は1日に患者があるかないか程度で、ハバルハバルで転倒し子供が足をすりむいたというものであったが、台風後は衛生環境の悪化、ケガをしやすい環境(廃材、釘など)から下肢の創傷が増加したとのことであった。

突然のスコール雨の中での活動になる
疲れているはずなのに皆笑顔帰る頃には再び晴れ間が