お知らせ

2013フィリピン台風ハイエン被災者医療支援 2013年12月2日

2013年12月2日・フィリピンレイテ島Merida町 DOH Merida RHUおよびCalnangan村

【本日の活動概要】
1.陸軍災害対策本部 Incident Command Post(ICP)Merida officeにて支援スタッフと合流
2.Calnangan村にて医療支援活動(午前、午後)。医師1名はDOH Merida Rural Health Unit(RHU)にて診療
3.DOH Merida officeにて報告後、解散
4.二次隊医師1名と看護師1名が朝Ormoc港到着。調整員が出迎えて活動場所へ移動

朝の天気:晴れ  気温:88F
8時30分DOH Merida officeに到着しました。すでにダバオDOHチームが引き上げ、DOH Merida officeのSolana医師も本日は不在だったため、HuMAチームがMerida RHUでの診療を任され医師1名がこちらを担当。他メンバーは巡回診療に行きました。

DOHからの支援スタッフと共に9時00分ごろ現場到着、 9時20分頃診療開始しました。本日は日差しは強いですが風があるので比較的過ごしやすかったです。巡回診療は日々場所が違うので楽しみもありますが、使用する会場のレイアウトによっては風通しが悪く体力を消耗するので不安要素でもあります。今日は日よけを使用しての屋外での診察でありましたが比較的涼しく、いつになく穏やかな時間が流れていました。

HuMA看護師たち。左の写真は血圧測定、右は薬を調剤しているところ。
HuMAのミッションでの看護師の役割は非常に大きく、看護師、薬剤師、診療のマネジメントと多岐に渡る

11時過ぎ、Calnangan村診療チームより医師1名がDOH RHUの様子を見にいきましたが、そこは本日の活動場所Calnangan村と180度異なる雰囲気でありました。待合室は大勢の患者であふれ、その中でHuMA医師一人が奮闘していました。災害の復旧時にもケガをされる方が増えます。 外来処置室には落下してきた木が顔にぶつかり顔面血まみれの男性2人が横たわっていました。助産院にある会陰部を縫合する針と糸しかない状況で、どうにか縫合を済ませました。 村での診察でもそうですが、限られた材料の中でもいかにベストに近い治療ができるか追及することは非常に有意義であり、何とかするのが災害医療です。処置終了後に内科診察も加勢して13時前に診察終了しました。DOH Merida RHUでの診療数は67名でした。

DOH Merida RHUにて。縫合処置を、いつも積極的に手伝ってくれる助産婦のパーラー氏と

一次隊医師3名は二次隊に活動を託し、明日日本に向けて出発します。我々を診療現場で献身的に支えてくれたDOHスタッフとの別れを惜しみながらDOH Meridaを後にしました。

【診療報告】
HuMAチームがMerida RHUでの診療を任され、医師2名がMerida RHUで診療を行い、残りのメンバーはCalnanganという海岸沿いの村で巡回診療を行った。

12月2日Calnangan村での受診者は139人で男性は57人(41.0%)、女性82人(59.0%)と女性の方が多かった。これまでの村よりはやや男性が多かった。

年齢は小児(0-15歳)が55人(39.6%)、生産年齢(16-59歳)は48人(34.5%)、高齢者(60歳以上)は36人(25.9%)と昨年の台風ボーファミンダナオ島派遣時とくらべると、高齢者が多かった。妊婦は0人、授乳婦は1人であった。

疾病、傷病としては急性呼吸器感染症が71例(51.0%)に認められた。69例が咳と風邪で軽症が多かったが、2例は軽度の肺炎で抗菌薬を処方した。下痢症は見られなかった。筋肉、関節の痛みでの受診は22例(15.8%)、頭痛は6例(4.3%)と鎮痛薬の処方が比較的多かった。外科的な傷病としては創感染が2例(1.4%)認められたが、外科的処置を必要とするものは認めなかった。50代男性の右腋窩の膿瘍を認めた症例があり、局所麻酔下に切開排膿を行った。

高血圧治療中の内服薬の処方希望が7例認められた。Metprololやロサルタンなどを処方されていた方が多いようで、同じものを希望されることが多かった。脳梗塞後の半身麻痺の患者が2名おり、2名とも降圧薬内服中であった。お二人とも自力でしっかり歩いておられたが、リハビリ等どこまで本国で手厚く受けられるのか不明である。

自己申告での喘息は3例(2.2%)見られたが、異常呼吸音を聴取するものは認めなかった。 糖尿病の治療中という右足切断後の52歳男性は上手に松葉杖を使用していた。一方、3か月のときに熱傷で左足が拘縮し右足は切断したという23歳男性は手に靴を履いて器用に歩いていた。日本では見かけたことのない光景に驚いた。 陰嚢腫大を主訴に受診した5歳の男児は、超音波検査より陰嚢水腫と診断した。増大傾向もなく疼痛もないとのことであったため、フォローアップを指示した。 とくに症状はないが、血圧測定を希望される方が9人あり、福島県飯舘村健康相談のミッションを思い出し心が和んだ。

RHUでは60名ほどの患者が詰めかけたそうであるが、詳細は後日の報告となる。 担当した医師によると、手関節付近の切創で動脈性の出血があり、木の葉や布切れなどをぐるぐる巻きにして止血して来院した患者があり、洗浄、縫合処置を行った。顔面の裂創の患者が1人あり、同様の処置を行った。RHUにある縫合セットは分娩時の会陰裂傷の縫合用か、硬い皮膚を縫うのは縫いにくかったそう。 Merida RHUの看護師、助産婦から、Merida周辺でHuMAチームは非常に評判がいいという話を聞き嬉しく思った。