HuMAは珠洲市と七尾市で支援活動を展開しています。支援の手が途切れないよう、随時、医療従事者を派遣しています。七尾市の恵寿総合病院では、派遣者の交代がありました。以下は、HuMA看護師からの報告です。
離脱の日になりました。予定日を超過した経産婦の方が無痛分娩を希望し、麻酔科当直も待機していました。病棟は急に忙しくなり、その間、私は病棟の母親とベビーの対応をさせていただきました。陣痛は発来せず、胎児の心音は安定しており、促進剤の増量まで見届けました。昼食の配膳から下膳、リネンの片付け、環境の整備まで行い、日勤業務を終了し、スタッフの皆さんにご挨拶とお礼を申し上げました。
恵寿総合病院のスタッフの皆様からは、温かい寄せ書きをいただきました。個々の支援者に向けて書いてくださっているようで、それはそれでお手間をかけてしまっているかもしれませんが、大変ありがたく受け取りました。こちらも、受け入れていただき、共にお仕事をさせていただき、一期一会の出会いに感謝の気持ちでいっぱいです。
荷物を背負い、まだ熱い気持ちを心に秘めて、院内の空中連絡通路である「キャロットロード」を渡ると、さまざまな感情が湧き上がってきました。この産院に初めて支援に入った時は、右も左も分からず、仮眠室から仮の産科病棟への動線を必死に覚えました。複雑な建物で、慣れるまで何度か迷い、その都度キャロットロードに戻りリセットしました。この廊下からは、片側には穏やかな海が広がり、もう片方には所々にブルーシートが掛かった日本家屋が立ち並ぶ街並みが見えました。緊張と不安の気持ちを抱きながら、いつもキャロットロードを辿って病棟へ向かっていました。
活動場所に向かう際、ここで胸に手を当て、「お母さん、赤ちゃん、スタッフの方々のために、精一杯の活動ができますように、今日一日が安全でありますように」と祈りました。安全第一で現場を尊重し自分は何ができて何をするべきか、自分が逆の立場だったら何をしてほしいかを考えながら、これまで繋がってきた先人たちの活動を継承しなければと心に決めていました。キャロットロードで気合を入れ、海と街並みの対照的な風景を見ながら、この先の現場に向かっていました。
夜勤で一緒に働いた方から、我々支援者が来ることでスタッフが少しずつ休めるようになったこと、夜間やお産中の人員として助かっていることを直接聞き、気持ちが楽になりました。自分の立ち位置が掴め、産後のお母さんへの関わりも慣れてきた最終日でした。やりきった感と同時に、後ろ髪を引かれる思いもあります。太陽が差し込み人参の影が映り込んだこの思い出のキャロットロードを、来た時とは異なる気持ちで進みました。穏やかな景色を眺めながら、この支援活動に関わった全ての方々への感謝の気持ちを込め、帰路につきました。